STORIES:OKUROJI

【Photographer's OKUROJI】#2
MARBLE ARCHでハイブリッドな食体験

【Photographer's OKUROJI】#2<br/>MARBLE ARCHでハイブリッドな食体験<br>
ストーリー

2020.10.21

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写真家の在本彌生さんがOKUROJIを訪れ、撮影。彼女のフィルターを通して見た、OKUROJIの姿を写真とエッセイで綴ります。今回は『MARBLE ARCH』にフォーカス。

 

Photo & Text: Yayoi Arimoto

 

『MARBLE ARCH』はハイブリッドな食体験を楽しめるお店だ。ロンドンのスペインバルのイメージがメインコンセプトだという。それってどんなお店? 確かに店の中は、ロンドンのケンジントンあたりの、地元の人に長年愛されている、洒落たつもりはないけどカッコよいパブみたい、とでも言おうか。スタンディングのカウンターなんぞ、仕立てのいいスーツに身を包むビジネスマンとジーンズにTシャツで訪れた古くからの友人が、ワンパイントジョッキを片手に昨日のサッカーの試合の話題で盛り上がっている、そんなシーンが目に浮かぶような雰囲気だ。しかし、ここで頂けるのは典型的な(胃にもたれがちな)イギリス料理やビールではなく、おいしく昇華されたブリットスパニッシュなのだ。ハンバーガーの肉にイベリコ豚を使ったり、フィッシュ&チップスもうんとスタイリッシュに。そして真骨頂のパエリアはじっくり時間をかけて調理される。まずは店の自慢のカクテル「スパイスジントニック」で喉を潤す。飛び切りのトニックウォーターを使い、フレッシハーブとスパイスが香る一杯。個人的にローズマリーをカクテルに使うのが好きな私は一気に気分が盛り上がる。店長の尾城美保子さんは元パティシエ、こんな粋なカクテルを綺麗に仕上げるのはお手の物だ。女性ひとりでの入店もこんな店長がいたら気兼ねない。さて、お店の真骨頂の味、シーフードパエリアの調理の様子を眺める。シェフの西田和貴さんとコックの立尾小百合さんが、キビキビと仕事をこなす。立尾さんはこの春スペインでの料理修行から帰国したところ、その前にいた職場でシェフと働いていたご縁で新店舗『MARBLE ARCH』での仕事に誘われたという。本場の料理の幅広さや勢いを東京でも見せていただけそうだ。可愛い鍋つかみと一緒にテーブルに運ばれてきたできたてのシーフードパエリアはなんとも芳しいかおり、アツアツを取り分け、レモンをぎゅっと絞って頬張ると、サフランの甘やかな風味と魚介の旨味が口の中いっぱいに広がった。あー、ここはどこだったかしら? お仕事終わりや映画を観た帰りにこんな店に立ち寄って、飲んで食べて気分をヨーロッパまですっ飛ばしていきたいものだ。

Profile

在本彌生(ありもと・やよい)

東京生まれ。外資系航空会社で乗務員として勤務、乗客の勧めで写真と出会う。
以降、時間と場所を問わず驚きと発見のビジョンを表現出来る写真の世界に夢中になる。
美しく奇妙、クールで暖かい魅力的な被写体を求め、世界を飛び回り続けている。
2006年5月よりフリーランスフォトグラファーとして活動を開始。
雑誌多数、カタログ、CDジャケット、TVCM、広告、展覧会にて活動中。

http://yayoiarimoto.jp/photo/fashion/

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